2013 年 36 巻 5 号 p. 408b
【背景】ループス腸炎は,全身性エリテマトーデス(SLE)患者に生じる腸炎のうち,感染性腸炎が除外され,下痢や腹痛などの臨床症状を呈し,画像上小腸病変を有するものとされる.免疫複合体が小動脈の血管壁に沈着し,血管炎が生じることが原因とされ,局所の虚血による粘膜浮腫や漿膜炎を起こす.ループス腸炎の疫学や病態は依然不明な点も多く,臨床的検討も少ない.
【目的】当科におけるループス腸炎の特徴を明らかにする.
【方法】2008年4月から2013年3月までの間に,当科でループス腸炎と診断された患者を後ろ向きに解析した.
【結果】9名(女性8名,男性1名)のループス腸炎患者が抽出された.ループス腸炎診断時の年齢は33(18-41)歳,SLE発症からループス腸炎診断までの期間は1.9(0-15)年,観察期間は2.1(0.5-5.8)年であった.ループス腸炎の診断時のSLE disease activity indexは15(4-21)であり,腹水貯留5例(56%),胸水貯留2例(22%),膀胱炎を3例(33%)で合併していた.また,9例中3例(33%)で再発し,再発までの期間は,それぞれ5ヶ月,67ヶ月,67ヶ月であった.再発例と非再発例の臨床症状,検査所見を検討したところ,再発例では3例中2例で初発時に結腸,直腸粘膜浮腫を伴っていたが,非再発例では1例も結腸,直腸粘膜浮腫は認めなかった.
【結語】9例のループス腸炎を経験した.初発時に結腸,直腸粘膜浮腫を伴う場合には再発に注意が必要と考えられた.