日本臨床免疫学会会誌
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総説
樹状細胞におけるJAK3-Stat6経路制御を介した炎症調節機構
山岡 邦宏前島 圭佑久保 智史田中 良哉
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2012 年 35 巻 1 号 p. 62-68

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抄録

  樹状細胞(DC)は抗原提示能に最も優れた細胞でT細胞等の獲得免疫を活性化することで免疫反応の起点となる細胞である.Janus kinase(JAK)はサイトカインがその固有の受容体に結合後,細胞膜直下で活性化されるチロシンキナーゼである.JAK3は血球系細胞に発現が限局し,リンパ球の分化・増殖に必須の分子であることが良く知られているがDCにおける機能についてはあまり知られていない.我々は,JAK3欠損マウスではDCの分化や抗原提示能は野生型と違いを認めないが,IL-10の産生が亢進していることを明らかにした.さらに,JAK3が活性化する転写因子Stat6の欠損マウスにおいても同様のサイトカイン産生パターンが見られる事も見いだし,DCにおいてはJAK3-Stat6経路がIL-10産生を負に制御することを明らかとした.IL-4は細胞内においてJAK3-Stat6を活性化することが良く知られているが,関節リウマチ患者関節液中ではIL-4産生が亢進しており,IL-4によるIL-10産生抑制機構が病態の一つとして考えられる.さらには関節リウマチを対象とした臨床試験において高い治療効果を示しているJAK特異的阻害薬(tofacitinib)の一作用機序としてDCからのIL-10産生誘導の可能性が考えられた.

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© 2012 日本臨床免疫学会
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