日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
緩徐進行性1型糖尿病とミエロペルオキシダーゼ特異的抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)陽性血管炎の経過中に多発性脳神経障害を呈した肥厚性硬膜炎の1例
栗原 夕子奥 佳代鈴木 厚大曽根 康夫半田 みち子岡野 裕
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2011 年 34 巻 6 号 p. 510-515

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抄録

  症例は63歳,男性.28歳発症の緩徐進行性1型糖尿病(SPIDDM)の経過中,2004年2月(58歳)に微熱,頭痛,血痰を認めた.画像所見および経気管支肺生検病理像で肺胞出血と肺胞隔壁炎を認め,ミエロペルオキシダーゼ特異的抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)が129 U/mlと高値より,顕微鏡的多発血管炎と診断した.ステロイドパルス療法後プレドニゾロンおよびシクロフォスファミドによる治療で改善した.その後,慢性副鼻腔炎,中耳炎が持続し,2009年に鞍鼻が見られたことから,限局型ウェゲナー肉芽腫症との鑑別が問題となったが,病理組織学的には診断できなかった.2009年6月に複視が出現した.右外転神経麻痺を認めたが,頭部造影MRIでは異常を認めなかった.同年8月右外転神経麻痺に加え右V, VII~XIIの多発脳神経障害が出現し再入院した.頭部造影MRIで造影効果を認める肥厚した硬膜の所見があり,MPO-ANCA陽性血管炎に関連する肥厚性硬膜炎と診断した.プレドニゾロン増量とシクロホスファミドパルス療法で改善した.
  SPIDDMの経過中にMPO-ANCA陽性血管炎による肺胞出血と肥厚性硬膜炎を合併する報告例はこれまでになく,貴重な症例と考え報告する.

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© 2011 日本臨床免疫学会
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