1999 年 22 巻 2 号 p. 86-92
症例は,50歳,女性. 1977年発症の全身性強皮症(SSc)で, 1995年7月, SScが再燃.プレドニゾロン(PSL) 20mg/日でコントロールは良好であったが,急速な腎機能の悪化が認められ,核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA) 504EU/mlと高値のため当科に入院.腎生検にて, 90%の糸球体に半月体の形成が認められ,壊死性糸球体腎炎(necrotizing GN)と診断された.蛍光染色では少量のIgG, C3の沈着を認めたが,半月体形成性糸球体腎炎(crescentic glomerulonephritis; CrGN)のうちではpauci-immune型に分類されると考えられた.近年正常血圧の腎クリーゼを呈するSSc症例では, p-ANCA陽性のCrGNを認め新しい型の強皮症腎が示唆されている.一方, microscopic PNでは50~80%の症例にp-ANCAが認められ,組織学的にはnecrotizing GNの像をとるため, p-ANCA陽性のCrGNを合併したSScは, microscopic PNとのoverlap syndromeと考えることもできる. SScに合併したp-ANCA陽性CrGNは,強皮症腎の-亜型として存在するのか, microscopic PNとのoverlap syndromeと考えるべきか興味ある症例と考え報告する.