1997 年 20 巻 5 号 p. 442-446
症例は64歳女性,高度の貧血のため当院紹介入院となった.血液検査では赤血球149万/μl,ヘモグロビン5.6g/dl, ヘマトクリット16.1%, MCV108flと大球性貧血が認められた.血清Vitamin B12 (VB12)は58pg/mlと低値を示した.上部消化管内視鏡検査では慢性萎縮性胃炎の所見であった.抗内因子抗体,抗壁細胞抗体陽性,シリング試験も陽性で悪性貧血と診断した.血清遊離T 3, T 4は正常範囲内であったがTSHは高値を示し,抗マイクロゾーム,抗サイログロブリン抗体陽性であり慢性甲状腺炎と考えられた.さらに内分泌学的検査を施行したところ,尿中17-OHCS低値,迅速ACTH負荷試験が低反応であり,潜在性の副腎皮質機能不全と診断した.本症例は多腺性自己免疫症候群のカテゴリーに入ると考えられた.