日本臨床免疫学会会誌
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原著
臨床調査個人票を用いた強皮症と悪性腫瘍合併の検討
坂内 文男森 満石川 治遠藤 秀治
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2004 年 27 巻 6 号 p. 402-406

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抄録

  強皮症と悪性腫瘍の関連については議論されているが,合併頻度や合併する悪性腫瘍の種類については明確な結論は得られていない.今回我々は,8,327例の臨床調査個人票を解析し,強皮症における悪性腫瘍の合併頻度と,合併例の臨床検査成績の特色を検討した.その結果,症例全体では3.1%に悪性腫瘍の合併がみられた.男女別の比較では,男性に悪性腫瘍が合併する割合が有意に高かった(P<0.01).悪性腫瘍合併例の平均年齢は,全体では64.3歳であり,非合併例の58.3歳よりも高かった(P<0.01).また,一般人口集団での悪性腫瘍例の割合を基準にして,解析対象となった強皮症患者において期待される悪性腫瘍症例数を算出し,実際の悪性腫瘍総数との比(O/E比)を求めた.その結果,一般人口集団と比較した場合,強皮症では男性で2.31倍,女性で1.64倍悪性腫瘍の合併頻度が高いことが示された.臨床検査所見で悪性腫瘍合併と有意な関連がみられた項目は,「抗核抗体陰性」(P<0.01),「%DLcoが70%以下」(P=0.03)の二項目であった.これらを性,年齢を調整して,ロジスティク回帰分析で検討した.その結果,「抗核抗体陰性」は有意な関連がみられなくなり,「%DLcoが70%以下」のみが有意な関連要因として残った(P=0.032).すなわち,合併する症例の特色として拡散能の低下が示され,悪性腫瘍合併と何らかの関連を持つことが示唆された.

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© 2004 日本臨床免疫学会
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