2023 年 54 巻 6 号 p. 347-358
“ふなずし”は,琵琶湖周辺で漬けられているなれずしの1種である.伝統的な食文化を継承するため,現代人に好まれる製造方法の解明が求められている.本研究では,嗜好性の高いふなずしの生産管理に向け,品評会に出品されたふなずしを対象として細菌叢と香気成分を分析し,官能評価スコアと併せて評価することを目的とした.ふなずしの細菌叢は,Lactobacillus spp.,Lb. acidipiscis,Lb. buchneri,Lb. brevis,Bacillus spp.,Staphylococcus spp.を主要とする6グループに大別できた.ふなずしから検出された香気成分は3グループに分けられ,それぞれ品評会スコアとおよそ対応していた.品評会で高評価を得たふなずしは清酒と共通の香気成分が多く,低評価のものは腐敗臭成分が多く検出され,嗜好性は香気成分でおよそ説明可能であることが示された.一方で細菌叢と香気成分の明確な関係性はみられず,酵母を含めた発酵過程における経時的な解析が必要となった.