日本内科学会雑誌
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移植後の再発性IgA腎症にde novoの膜性腎症を合併した1例
由利 健久立石 圭太杉下 尚康福田 喜裕谷 吉雄栗原 怜北田 博久石川 勲篠田 晤
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1984 年 73 巻 12 号 p. 1856-1860

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抄録

35才,男. 26才よりたんぱく尿を認め, 30才のときにIgA腎症と診断された. 32才で慢性腎不全となり, 4カ月間の血液透析療法後, HLA one haploidenticalの23才の弟より腎臓の移植を受けた.腎移植後6日目に急性拒絶反応があり, pulse療法と血液透析を行ない,腎機能は安定した.しかし,時々,血尿を認め,術後18カ月目頃より尿たんぱくも徐々に増加したので, 33カ月目に移植腎生検を施行した.光顕では,糸球体係蹄壁の軽度の肥厚とメサンギウム細胞の軽度の増大がみられた.間質の細胞浸潤はわずかで,血管周囲には,ほとんど認めなかつた.免疫蛍光染色では,メサンギウム領域にはIgAとC3が,糸球体係蹄にはIgGがびまん性に微細顆粒状に認められた.電顕でも,糸球体基底膜の上皮細胞側とメサンギウムにdense depositを認めた. IgA腎症は約50%に移植後に再発するとされているが,本例のごとく再発性IgA腎症に, de novoの膜性腎症を合併した報告はきわめて少なく,腎炎の発症機序を考える上にも興味あると思われたので報告した.

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