日本内科学会雑誌
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群馬県利根沼田地方で発生したWeil病の1例
長坂 一三田中 昌輝平沢 信子富岡 真一元山 誠山路 達雄山田 昇司笛木 隆三小林 節雄
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1980 年 69 巻 6 号 p. 732-737

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抄録

症例は56才,男性.職業は旅館番頭.素足で魚釣,水田作業に従事後,高熱が出現,発熱,筋肉痛,下痢を主訴として入院.入院後,典型的な臨床経過をとり,顕微鏡的凝集反応でL. icterohaemorrhagiae 80倍陽性で, Wei1病と診断された. SM,抗血清療法などの他,腹膜潅流も併用したが,昏睡状態となり,呼吸困難で死亡した.剖検では,著明な黄疸と出血傾向が有り,直接死因は,肺実質内出血であつた.組織学的には,腎で尿細管上皮の変性と間質性腎炎が著明であつた.肝では肝細胞索解離,胆汁うつ滞,有糸分裂縁などが特徴的で, Areanらの記載と一致した.一方,最近7年間の本邦におけるレプトスピラ症の報告例は103例で,死亡例は14例,全てWeil病であつた. Weil病は69例で,うち比較的記載の十分な30例について,治療内容,治療開始病日を検討すると,死亡例12例,生存例18例とも全例SMが使用された.治療開始病日は,死亡例では,平均8.3日であつたが,生存例では,平均5.6日であつた.この数日の遅れが予後に重大な影響を与えていると思われ,自験例でも,こうした治療開始病日の遅れが致命的であつた. Weil病は,現在なお,全国各地で散発的な発生がみられ,急性熱性疾患の診断にあたつては,本症の存在を常に念頭に置く必要性が痛感させられた.

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