日本内科学会雑誌
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全身脱毛症,尋常性白斑症,表在性真菌症,悪性貧血に両側性内側縦束症候群を合併した特発性Addison病の1例
松本 俊夫戸川 潔山本 通子山上 修一尾形 悦郎
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1977 年 66 巻 11 号 p. 1588-1594

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抄録

症例は現在35才,男.母に慢性甲状腺炎がある.結核の既往は無い. 9才頃より脱毛が始まり15才でalopecia universalisとなる. 26才頃,尋常性白斑症に気付き,同じ頃より手足の爪および皮膚にTrichophyton rubrumによる表在性真菌症が出現. 2~3カ月後全身倦怠,体重減少等症状により第1回入院.皮膚,粘膜色素沈着,低Na血症を認め, ACTH 3日刺激試験に無反応よりAddison病と診断. hydrocortisoneおよび電解質の投与でコントロールされた.同時期に,眼球は両側方注視麻痺を示したが,後に外転のみ可能となり外転眼に水平眼振を認めた.水平面注視麻痺を含めた本異常を両側性内側縦東症候群と診断. 34才で悪性貧血を発症し再入院. macrocytic anemia, megaloblastic marrow,血清vitamin B12低下,胃内因子欠如等を認め,胃粘膜組織所見及びSchilling testの結果などより診断確定.貧血はhydroxycobalamineにより消失した.免疫学的検索の結果,血清抗副腎皮質抗体は検出されなかつたが抗甲状腺抗体,抗胃壁細胞抗体,抗胃内因子抗体を検出.ヒト副腎を用いたMITは陽性.合併疾患,家族歴,既往歴等と合わせ,本症例のAddison病が“特発性”と診断されると同時に,これら諸疾患発症の基礎に免疫機構異常の関与が強く示唆された.本症例が,さらに両側性内側縦束症候群を合併した事実から,このものの発症にも同様機序の関与が想定された.この可能性は,本症候群患者4例の検索で“自己免疫疾患”合併の多発がみられたことから,さらに支持された.

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