日本内科学会雑誌
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異なつた所見と性状を呈した左房粘液腫の2例
杉本 英克酒井 照夫金谷 久司土居 寿孝滝井 昌英荒川 規矩男徳永 皓一
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1976 年 65 巻 9 号 p. 913-919

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抄録

心臓腫瘍は希な疾患であるが,われわれは最近半年間に臨床所見の互に異なつた2例の左房粘液腫を経験した.何れも超音波診断法により診断し,短期間に外科的に治癒させ得たので報告する.症例1は62才の男性.粘液腫にしばしば見られる血沈亢進,高γ-グロブリン血症を認め,心電図は正常洞調律で,聴診上では僧帽弁狭窄症同然であり,塞栓症の既往を有していた.摘出標本は柔わらかく表面不整の不定形ゼラチン様腫瘍であつた.これに対し,症例2は21才の男性で,血沈, γ-グロブリンともに正常.心電図は心房細動で,聴診上では僧帽弁閉鎖不全症同然であり,塞栓症の合併はなかつた.摘出標本は硬く,球状であり,表面は非常に平滑であつた. 2例共,外来初診時の超音波診断法によつて,拡張期に僧帽弁前尖後方に,異常塊状エコーを認め,収縮期には左房内に帰納する状態が認められた.依つて左房粘液腫と診断した.心音図上特徴的なtumor ejection soundとearly diastolic sound,を認め,それぞれ心尖拍動図のsystolic upstrokeの切痕およびsystolic down strokeの隆起に一致していた.これらの音の発生源を超音波高速度連続撮影法との対比によつて検討した.

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