日本内科学会雑誌
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甘草によるpseudoaldosteronismの1症例
杉田 貫大鶴 昇宝来 善次山本 智英荻原 俊男藤林 敏宏打田 日出夫
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1974 年 63 巻 11 号 p. 1312-1317

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抄録

64才,女子で頭痛を主訴とし,低カリウム血症を伴い,尿中力リウムの1日排泄量はかならずしも高値を示さないが,カリウムクリアランス値は正常の上界で,かつ血漿レニン活性の低下より原発性アルドステロン症が疑われた.しかし選択的副腎静脈X線造影では明らかな副腎の腫大を指摘しえず,またその際採取した下大静脈,股動脈,左・右副腎静脈の血漿アルドステロン値は低く, 131I-19-iodocholesterol試験でも明らかな副腎のシンチグラム像が得られなかつた.初診時より薬剤の服用にかんして質問を行なつていたが,この時点であらたに詳細な問診を行ない,意外にも患者にとつては薬の範疇に入つていなかつた漢方薬「甘草」を長期間にわたつて服用していたことが判明した.本症例は甘草の服用中止後約3週間で血清カリウム値は正常範囲に戻り,現在自覚症も消失し健康な日常生活を送つており,いわゆるConnらの提唱せるlicorice induced pseudoaldosteronismの範疇に属するものと考えられるが,中国ブームの折からかゝる症例は増加するものと推測され,文献的考察もあわせ検討した.

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