The Journal of Toxicological Sciences
Online ISSN : 1880-3989
Print ISSN : 0388-1350
ISSN-L : 0388-1350
Propiverine hydrochlorideのラット経口投与による52週間慢性毒性試験および5週間回復試験
山下 和正桑田 雅彦入村 兼司森永 秀信黒川 恭子芦沢 真
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 15 巻 2 号 p. 107-144

詳細
抄録

P-4を0, 0.5, 5および50mg/kgの投与量で52週間経口投与し, その慢性毒性ならびに回復性を検討し, 以下の知見を得た. 1. P-4投与による死亡例はなかった. 一般状態の観察では50mg/kg群に散瞳, 一過性の流涎および雌に下腹部の尿による汚染がみられた. 2. 体重の推移では50mg/kg群で投与初期より増加抑制がみられた. 3. 摂餌量の推移では著変はみられなかった. 4. 尿検査では50mg/kg群に尿量およびK排泄量の増加あるいは増加傾向, 浸透圧の減少あるいは減少傾向が, 雌ではさらに蛋白の陰性化およびウロビリノーゲン量の減少がみられた. 5. 血液学的検査では著変はみられなかった. 6. 血液生化学的検査では50mg/kg群の雌雄に尿素窒素の増加がみられ, 雄ではさらに中性脂肪, 総コレステロール, 遊離コレステロール, 遊離脂肪酸およびリン脂質の減少がみられた. 7. 眼科学的検査では著変はみられなかった. 8. 病理学的検査では50mg/kg群に腎近位尿細管の上皮細胞内に好酸性核内封入物および細胞質内に同様の好酸性物質がみられ, 電顕的に大型で均質な低電子密度を持つ類円形構造物が認められた. 肝では50mg/kg群に重量あるいは重量比の増加がみられ, 小葉中間帯の脂肪沈着と組織化学的に小葉辺縁帯のγ-GTP染色陽性細胞数の軽度な増加が認められた. また, 電顕的に滑面小胞体の軽度増生, cisternaeの拡張および大型脂肪滴の沈着がみられた. 肝組織内VLDL量およびその分布に群間の差はなかった. 9. 上記諸変化は休薬により回復ないし回復傾向を示し, 可逆性の変化であった. 10. 本試験における無影響量は雌雄とも5 mg/kgと推定された.

著者関連情報
© 日本トキシコロジー学会
前の記事
feedback
Top