分析化学
Print ISSN : 0525-1931
水酸化鉄(III)によるカルボン酸並びにその類縁化合物の捕集と構造化学的体系化
堀 智孝杉山 裕子杉山 雅人
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1994 年 43 巻 11 号 p. 965-970

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抄録

自然水中の微量生理活性有機化合物を捕捉し,同定が可能となる濃度まで予備濃縮する方法として,水酸化鉄沈殿(hydrous iron oxide, HIO)への吸着現象に着目した.生理活性有機化合物のモデルには,分子構造の相違を考慮して,34種のカルボン酸及びその類縁化合物を選んだ.これらの各々について吸着率-pH曲線を描き,各分子中のHOOC-基の数と置換位置並びにHOOC-基以外の置換基が吸着曲線に及ぼす影響を系統的に比較した.(1)HOOC-基を2個以上有するカルボン酸はpH4・5~5.5で定量的に吸着捕集される.(2)HOOC-基とともにHO-基が含まれていると,この化合物の吸着は促進されるが,逆にCl-基は吸着を抑制する.(3)いずれの場合も置換基がHOOC-基に対して立体的に近接した位置にあるとその効果は大きくなる.(4)H2N一基による効果は芳香族カルボン酸では目立たないが,脂肪族では吸着を抑制する.(5)化合物全体についてみると,HOOC-基の酸解離定数(pKa)と吸着率が50%となるpH値(pH1/2)の間には,pH1/2=-pKa+9の関係が認められる.この知見を援用すると,HIOによる有機化合物捕集法の成否を予見することができる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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