1994 年 43 巻 12 号 p. 1087-1092
イオンクロマトグラフィーの試料注入において,種々のpH及び濃度を有する試料溶液をサンプルループに大過剰量(20倍程度)に通液した場合,試料溶液が中性(pH7)以上では陰イオンの検出器応答は一定であったが,酸性の試料溶液では,陰イオン(特に硫酸イオン)がサンプルループに吸着濃縮され,それが溶離液により脱着し,試料溶液とともにカラムに送られることから吸着された陰イオンの検出器応答が増大した.そこで,酸性の試料溶液中の陰イオンを良好に分離定量するために,サンプルループへの陰イオンの吸着の抑制法について検討したところ,試料溶液を溶離液に溶解する方法が最も簡便かつ効果的であった.本前処理法を用いて,種々のpHを有する酸性雨及び河川水等の環境水中の陰イオンの定量を行ったところ良好な結果が得られた.