北海道矯正歯科学会雑誌
Online ISSN : 2432-6747
Print ISSN : 0916-202X
前歯部開咬を呈する成長期の矯正患者における顎関節雑音の発現と顎顔面形態的特徴の関連について
梶井 貴史今井 徹金子 知生松山 功梶井 抄織岡本 亨飯田 順一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 28 巻 1 号 p. 10-14

詳細
抄録

顎関節症との関連が示唆される咬合要因の1つに骨格性前歯部開咬がある。最近の動物実験では、顎関節内障と下顎骨の成長には関連があることが指摘されている。そこで今回、我々は成長期の前歯部開咬患者における顎関節雑音の発現と顎顔面の形態的特徴との関連について検討した。本学附属病院矯正科に初診時年齢が15歳未満で来院し、その後18歳以降まで当科を受診した前歯部開咬を呈する患者のうち、反対咬合を除く40名を抽出した。それらの者の顎関節雑音の既往を調査したところ、治療前または治療中に顎関節雑音を発現した者(以下、症状群)は17名(初診時平均年齢12.0歳、男子3名、女子14名)であり、顎関節症状を発現しなかった者(以下、無症状群)は23名(初診時平均年齢11.0歳、男子6名、女子17名)であった。初診時の側面頭部X線規格写真を用いて、両群の骨格系および歯系の形態的特徴を比較検討した。結果は以下の通りであった。1.症状群は全調査対象の42.5%を占めていた。2.骨格系では、症状群は無症状群に比べ、下顎枝後縁が有意に後傾し、顎角は有意に狭小し、骨格的にII級傾向を示し、下顎枝が短い傾向を示した。3.歯系では、上下顎前歯の歯軸傾斜には2群間で差は認められなかった。以上より、成長期の開咬患者では顎関節雑音を発現する者が多く、下顎枝の後頭と短小化を呈する形態的特徴を持つ者が多いことが示唆された。

著者関連情報
© 2000 北海道矯正歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top