日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
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大白川ブナ・ミズナラ成熟林(old-growth forest)における土壌窒素無機化速度の空間変動解析
飯村 康夫 Suchewaboripont Vilanee廣田 充吉竹 晋平大塚 俊之
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2019 年 90 巻 6 号 p. 415-423

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抄録

本研究では一次遷移で成立したブナ・ミズナラ成熟林下の未熟土における窒素無機化速度と硝化速度をレジンコア法を用いて多地点で測定し,これらの空間変動性と土壌環境因子との関係,およびギャップモザイク構造に代表される成熟林での構造不均一性との関係について知見を得ることを目的とした.本試験地での135日間における窒素無機化速度および硝化速度はそれぞれ2.7~94.7 kg-N ha−1 period−1と0.1~31.1 kg-N ha−1 period−1であり,平均値はそれぞれ24.6と4.9 kg-N ha−1 period−1であった.また,窒素無機化に占める硝化の割合(硝化率)は0.9~91.5%で,平均は24.3%であり,無機化速度や硝化速度と共に空間変動性が非常に高かった.窒素無機化や硝化速度,および調査地点上の開空度(%)は無機態窒素の現存量(NO3-N, NH4-N)や仮比重,鉱質土壌への窒素流入量と有意な正の相関を示し,土壌CN比とは有意な負の相関を示した.さらに,窒素無機化速度や硝化速度と開空度との間には有意な正の相関が認められ,ギャップ(開空度50%以上)では窒素無機化や硝化速度が林冠下(開空度50%未満)よりも有意に高かった.これらより,本試験地ではギャップ等で林冠が開いている場所ほど窒素無機化速度や硝化速度が高いことが示唆された.

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© 2019 一般社団法人日本土壌肥料学会
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