日本土壌肥料学雑誌
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Print ISSN : 0029-0610
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ブロッコリー秋作における被覆肥料の施用が土壌からの一酸化二窒素発生に与える影響
当真 要 大西 まゆ白鳥 豊須藤 重人西村 誠一上野 秀人
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2018 年 89 巻 4 号 p. 302-310

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抄録

ブロッコリーの秋作において,被覆尿素または被覆硝カルの施用が土壌からのN2O発生に与える影響について調べた.2016年9月から11月にかけて,愛媛大学農学部附属農場に無施肥(C)区,尿素(U)区,被覆尿素(CU)区,および被覆硝カル(CN)区をそれぞれ4反復で設けた.CU区とCN区ではU区より全窒素(N)施用量を2割減らし,施用Nの4割を被覆Nで施用した.N2Oフラックスを測定し,施用Nから発生したN2Oの割合(EF)を算出した.さらに,地温,土壌pH,土壌アンモニウム態Nおよび硝酸態N含量を測定し,作土層からの無機N溶脱量と頂花蕾収量,N吸収量およびN利用率を求めた.被覆尿素や被覆硝カルのEFはそれぞれ0.62%および0.23%で尿素(0.06%)よりも高い傾向にあり,被覆尿素および被覆硝カルの施用は尿素を分施するブロッコリー秋作体系においてN2O発生量を削減する効果は見られなかった.その原因として,生育前半の高温と多雨が被覆肥料Nの溶出とその後の硝化・脱窒におけるN2O生成を促進し,かつ生育後半に追肥で施用した尿素Nは低温と少雨のためN2O生成が少なかったためと考えられた.CN区では収量もC区と同程度に低く無機N溶脱量は最も多く,生育前半の多雨によるN溶脱が収量にも影響した可能性がある.以上より,尿素に代えて被覆尿素を用いる場合,肥料施用時期の気象条件によってはN2O発生量が増加する可能性があり,また被覆硝カルは収量低下や肥料N溶脱が増加することが懸念された.

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© 2018 一般社団法人日本土壌肥料学会
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