日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
天然水の重水自然存在率
佐久間 敏雄増谷 雪雄倉持 寛太
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1989 年 60 巻 3 号 p. 203-209

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抄録

1) 札幌周辺の雨(雪)水のδ_D 値は平均で-60.6,レンジは-140〜1.5%であり,変動幅が大きかった。2)北海道近海の海水は標準海水よりわずかに低いδ_D(-20〜-10‰)を示したが,石狩湾内の海水はそれよりさらに低いδ_Dを示した。石狩川など河川水のδ_Dは-95〜-75‰の比較的狭い範囲にあったが,支笏湖-千年川水系をはじめ湖沼水のそれはやや高い値を示した。 3)土壌水のδ_D値は平均-116.3‰,変動幅-150〜-60‰で,表層部の値が大きく,変動幅も広い。下層土のδ_Dは-120‰程度である場合が多く,表面に比べてやや低かった。土壌水δ_D値の垂直分布には既往の降雨によるD供給の履歴が反映されており,これを正確に追跡することによって土壌水の挙動を解析できる。 4)長期にわたる野外のトレーサー実験に際しては,降雨によって供給されるDの補正が不可欠である。 5)これらの測定をTCD-ガスクロマトグラフィーによって行うためには,キャリアーガスとして軽水電界水素を用いてバックグラウンドを下げるとともに,標準較正を頻繁に行って再現性を高く維持する必要がある。

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© 1989 一般社団法人日本土壌肥料学会
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