計算機統計学
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線形計画法による改定IP-OLDFの計算時間の改善
新村 秀一
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2010 年 22 巻 1 号 p. 37-57

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抄録

改定IP-OLDF(Revised Optimal Linear Discriminant Function using Integer Programming)は,整数計画法を用いて,教師データで最小誤分類数(the minimum number of misclassifications,MNM)を直接求める線形判別関数である.しかし,整数計画法は計算時間がかかるため,線形計画法を用いて計算時間を短くすることを試みた.第1段階で,改定LP-OLDF(Revised Optimal Linear Discriminant Function using Linear Programming)をデータに適用する.そして,サポート・ベクタ(Support Vector,SV)で正しく判別されたデータと判別されないデータに分ける.第2段階で,改定IP-OLDFを正しく判別されないデータに適用する.この手法を改定IPLP-OLDFと呼ぶことにする.本研究では,改定IPLP-OLDFで計算時間をどれだけ短くできるか,そして正しいMNMが得られるか否かを以下のように検証する.4種類の実データを教師データとし,教師データから2万件のリサンプリング・データを作成し評価データとする.これらのデータで,計149個の説明変数の全ての組み合わせモデルで計算時間と誤分類数を求めた.分析結果から,次のことがわかった.1.改定IPLP-OLDFは,改定IP-OLDFよりも計算時間が著しく改善された.2.改定IPLP-OLDFで得られた誤分類数は,教師データでは全てMNMと一致した.3.評価データでは,多くのモデルで改定IPLP-OLDFと改定IP-OLDFで得られた誤分類数は一致した.一致しない場合でも,差は大きくなかった.4.教師データと評価データの誤分類確率の差は,判別成績の良いモデルでは,ほぼ2%以下に収まった.すなわち,改定IP-OLDFと改定IPLP-OLDFは汎化能力が高い手法といえる.以上から,現実の問題に適用する場合,改定IP-OLDFに代わって改定IPLP-OLDFを用いればよいことがわかった.

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© 2010 日本計算機統計学会
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