女性心身医学
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原著
NIPT(non-invasive prenatal testing)を希望する妊婦の心理的背景因子の検討
白土 なほ子坂本 美和宮上 景子濱田 尚子四元 淳子斉藤 敦子廣瀬 達子和泉 美希子下平 和久関沢 明彦
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2017 年 22 巻 2 号 p. 154-162

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抄録

【目的】出生前検査の周知とともに,妊婦の心理的ストレスは増大している.今回我々は出生前検査を希望して遺伝カウンセリングを受けた妊婦を対象に心理的ストレスを定量的に解析することで,患者背景による,妊婦の心理的ストレスの影響について検討した.【方法】当院で2014年6月から9カ月間にNIPT(無侵襲的母体血中胎児染色体検査)を希望して遺伝カウンセリングを受けた妊婦に,背景問診,心理社会的要因評価票,HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)-A(不安傾向)と -D(うつ傾向)を配布し,それらに回答した501名を対象として,統計的解析を行った.【成績】すべてに回答した501名中,NIPT受検者は477名,確定検査に変更したものが18名,出生前検査を施行しなかった妊婦は6名であった.妊娠出産に関わるストレスがあると記入した妊婦は298名であり,ストレスVASは43.4±26.1(平均±SD),心理社会的要因点数は20.5±3.9であった.ストレスVASと心理社会的要因点数,HADS-Aと -DそれぞれとストレスVAS,HADS-Aと -Dに相関関係が見られた.HADS-A(不安傾向),HADS-D(うつ傾向)それぞれ7点以下を正常(N群),8~10点を不安・うつ傾向疑い(D群),11点以上を不安・うつ傾向あり(P群)とした.HADS-A(N,D,P群)はそれぞれ355,94,52名,HADS-D(N,D,P群)はそれぞれ319,115,67名であった.それぞれの群間で,妊娠/流産回数,年収,出生前検査経験,先天性疾患の児が身近にいたか,などの背景因子に有意差はなかった.HADS-A, -DともにD,P群でVAS高値であった.妊娠出産に関わる心理社会的要因項目「自分のこと」としては,自身の職場におけるストレス,夫との関係性,不妊が大きく影響することが分かった.【結論】NIPTを希望する妊婦は心理的ストレスが高い傾向にあり,HADS高値の出生前検査受検者は特に不安・うつ傾向を示すことから,遺伝カウンセリングではより時間をかけた心理的サポートが必要と考えられた.

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© 2017 一般社団法人 日本女性心身医学会
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