保全生態学研究
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Print ISSN : 1342-4327
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専門家アンケートをもとにした一対比較による在来植物の脅威となる外来生物の重要度評価(保全情報)
小池 文人小出 可能西田 智子川道 美枝子
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2015 年 20 巻 1 号 p. 87-100

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抄録

絶滅危惧植物や保全すべき重要な植物群集の中には、外来生物(植物や動物、寄生生物)による被害が大きなものもある。種の生物学的な特性にもとづく外来種のリスク評価は研究途上であるが、社会においては研究の進展を待たず、今すぐ評価することも必要である。ここではこのような要求にこたえるため、専門家によるアンケートをもとに、在来植物のハビタットにおける対策の重要性と、外来生物種の脅威の大きさの評価を試みた。絶対的な尺度のないアンケートでは評価者によって全体の重要度レベルが異なり、また北海道から沖縄までの全国の全ての現場を知っている専門家は存在しない。そこで回答者ごとの外来種間の1対1比較(どちらが相対的に大きな脅威か)を元のデータとして、全体の重要度を再構成した。侵入先のハビタットへの外来種対策の重要度にも違いがあるため、まずハビタットごとの対策の重要度を比較し、次に各ハビタット内で外来種の重要度を比較した。対策を取るべきハビタットとしては、小笠原諸島など海洋島の植生、水生植物群集、河原・崩壊地の貧栄養砂礫地の順に重要であり、里山の二次草原と貧栄養湿地、砂浜海岸が続くとの結果になり、それぞれのハビタットでの重要な外来生物のランキングが得られた。交雑や寄生などハビタット保全以外の対策が必要な影響については別途比較した。

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© 2015 一般社団法人 日本生態学会

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