2018 年 6 巻 1 号 p. 60-64
本実験課題では、コヒーレントX線回折による電荷密度波物質の研究に向けた事前検討を目的として、X線光学系・測定装置系の設置と、1T-TaS2 をテスト試料に用いた評価をBL29XUにおいて行った。室温における評価では、1T-TaS2 の衛星反射におけるスペックルパターンを測定できることを確認した。試料に電流を印加して行った測定では、コヒーレントX線回折パターンに有意な変化は観測されなかったが、電流印可方法に問題があった可能性があり、断定的な結論は得られなかった。温度依存性の測定に向けた検討では、低温測定用クライオスタットのベリリウム窓材がコヒーレントX線回折パターンに影響を与えることが確認された。更に、ヒーターを使用して試料を 〜370 K まで加熱した測定では、ブラッグピークの強度分布に揺らぎが観測され、高温では測定系が十分に安定していないことが示された。