2014 年 72 巻 1-4 号 p. 65-76
富山県西部の高岡市五十辺(いからべ)に分布する下部更新統板屋層から暖流系二枚貝であるビョウリツハナイタヤガイPecten (Pecten) byoritsuensis Nomura, 1933とホクロガイOxyperas (Oxyperas) bernadi (Pilsbry, 1904)が産出した。どちらの種も日本海側では, 化石として産出が珍しい種であるが,これまでの化石記録を含めて検討した結果,これらの種は日本海には前期更新世に出現したことが明らかとなった。ビョウリツハナイタヤガイは前期更新世末に日本海の環境悪化により絶滅したが,ホクロガイはイタヤガイやカズウネイタヤと同様に広範囲に分布していたため氷期を生きのびた。貝化石群の組成や地質年代から,小矢部市田川の下部更新統大桑層は従来対比されてきた頭川層ではなく, その上位の板屋層に対比されることも明らかとなった。