森林立地
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ヒノキの雄花生産量に土壌条件と強度間伐が及ぼす影響
中西 麻美稲垣 善之深田 英久柴田 昌三大澤 直哉
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2008 年 50 巻 2 号 p. 167-173

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抄録

ヒノキ花粉はアレルギーを引き起こす物質であり,ヒノキの雄花生産を減少させる森林管理が求められている。ヒノキの雄花生産に土壌条件と強度間伐が及ぼす影響を明らかにするために,京都府と高知県の土壌条件と林分条件の異なる6林分を調査林分とした。それぞれの林分で2つの調査区を設定し,一方は間伐率50%以上の間伐を行い,もう一方は間伐率25%未満の通常間伐または無間伐の対照区とした。ヒノキの雄花生産量を2005〜2007年の3年間にわたって測定した。気象条件が異なる京都と高知で雄花生産量に明らかな差は認められなかった。2005年の雄花生産量はほとんどの調査区で他の2年間より高い値を示した。豊作年たった2005年には,雄花生産量は土壌CN比が低いほど多い傾向が認められた。一方,2006年,2007年には雄花生産量と土壌CN比に明確な関係は認められなかった。強度間伐区と対照区の雄花生産量に有意な差は認められなかった。強度間伐により個体数が減少しても,残存木や林縁木の個体あたりの雄花生産量が増えたために面積あたりの雄花生産量は低下しないと考えられた。以上の結果,強度間伐はヒノキの雄花生産を抑制する有効な管理手法とはいえなかった。豊作年には土壌条件が良好な林分でヒノキ雄花の生産量が大きいことが明らかとなった。

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© 2008 森林立地学会
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