2009 年 8 巻 3 号 p. 101-108
本研究は,脳血管障害患者を対象に,手浴は何をもたらすのかを明らかにすることを目的として,事例検討を行った.対象者は,脳血管障害と診断され,手指に麻痺がある,痺れがある,もしくは巧緻動作が困難な入院患者7名 (男性6名,女性1名,年齢65~82歳) であった.対象者に,同一の研究者1名が手浴を週2回,2~5回実施し,手浴前中後の各対象者の言動を観察した.その言動の中から手浴による反応を抽出し,カテゴリ化した.また,手の伸展 ・ 屈曲の可動域の変化を,指尖手掌間距離および手関節中指間距離によって測定した.その結果,手浴は,対象者にとって,【あたたまる ・ 気持ちいい体験】となっており,患側の【痺れ ・ 痛みの緩和】を一時的にでももたらし,【思いを語る】ことを促していた.また,手浴中から手浴後に,対象者は【手の動きの改善を実感】し,手関節中指間距離 ・ 指尖手掌間距離の測定が可能であった3名には,手の伸展 ・ 屈曲に改善がみられた.これらのことが相互に関連し,回復への希望につながる【やる気の向上】が生じていた.