寒冷地である青森県において,水稲品種「まっしぐら」を供試して2水準の基肥窒素と2水準の栽植密度の4組合せで3カ年の試験を行い,基肥窒素の増肥が疎植栽培の収量,玄米外観品質,食味に及ぼす影響を評価した.気象条件は特に分げつ始期で違いがみられ,2014年と2015年は高温多照であったが,2016年は低温寡照であった.その結果,幼穂形成期頃の茎数は2016年が最も少なかった.標肥条件における慣行栽植に対する疎植の収量比は2014年と2015年が同等で,2016年が94%と少なかった.しかし,2016年における疎植栽培による減収は,基肥窒素の増肥により補償された.玄米外観品質,玄米蛋白質含有率,食味官能には栽植間と施肥間で有意差がなかった.施肥条件と栽植条件の各組み合わせによる経営評価を行った結果,所得は増肥疎植条件が高水準で安定すると試算された.