抄録
南西諸島で栽培されたサトウキビ品種の中から不良環境に対する適応性を異にするとされるNCo310とNi1を選び, 両品種の土壌水分に対する生育反応を比較した. 両品種ともに個体重が最大となる土壌水分値(fopt)が存在し, 個体重は土壌水分含量がfoptより大きくても小さくても減少した. foptに明確な品種間差異は認められなかった. 生長が停止する土壌水分含量(f0)はNCo310で低かった. 湛水条件下では両品種ともに初期生育量が大きく低下したが, 広域適応性品種NCo310ではこの条件下で生じた生育量の低下が時間とともに縮小する傾向にあった. foptにおける個体重(Wmax)はNCo310のほうで大きかったが, Ni1はNCo310より茎の割合が大きく, foptでの茎重はNi1で勝る傾向を示した. 一方, 湛水および乾燥の両不良条件下では, Ni1は個体重と全重に対する茎の割合の低下がともに大きく, 茎重はNCo310より劣った. ここに示されたf0の低さと湛水条件下での生育回復力の大きさ, 並びに土壌水分の変化によって茎の割合が変化しにくいという特性は, 広域適応性品種としてのNCo310の特徴を代表するものと考えられた.