日本作物学会紀事
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直播水稲の耐倒伏性に関与する生理生態的形質 : 第1報 押し倒し抵抗測定による耐ころび型倒伏性の品種間比較
寺島 一男秋田 重誠酒井 長雄
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1992 年 61 巻 3 号 p. 380-387

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抄録

直播栽培における稲の耐ころび型倒伏性を生理生態的視点から解析する目的で, 地下部による株の支持力を品種間, 各種栽培法で比較した. 供試品種には移植条件で育成されてきた日本品種および半矮性インド型品種と直播条件下で育成されてきたアメリカ品種を用いた. 株支持力は上村らの手法に基づいて押し倒し抵抗を測定することにより推定した. 各品種の押し倒し抵抗ところび型倒伏の発生程度との間には負の相関関係がみられ, 耐ころび型倒伏性の評価における押し倒し抵抗測定の有効性が認められた. 栽培条件の押し倒し抵抗に対する影響については, 播種深度を1cmとして栽培した場合には地表面への播種に比べ, また, 水管理を間断潅漑で行うと常時湛水条件に比べてそれぞれ押し倒し抵抗が高まる傾向がみられた. 条間を一定とし, 条内の播種密度のみを変えた場合には, 播種密度の違いが押し倒し抵抗に及ぼす影響は小さかった. 品種間における押し倒し抵抗の差異は以上のような栽培方法の違いによる変動に比べて大きかった. アメリカ品種および穂重型の半矮性インド型品種は日本品種より高い押し倒し抵抗値を示し, ころび型倒伏程度もより軽微であった. 以上から, 直播水稲の耐ころび型倒伏性の改善のためには, 地下部による株支持力の育種的改良がより重要であることが示唆された.

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