地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
北上山地,遠野複合深成岩体の岩石化学的特徴(<特集>日本列島における白亜紀アダカイト質花崗岩類の起源)
御子柴(氏家) 真澄蟹澤 聰史
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 62 巻 3 号 p. 183-201

詳細
抄録

北上山地の遠野複合深成岩体は,内側に向かって珪長質の岩相が分布する累帯深成岩体である.岩体は,石英閃緑岩とトーナル岩からなる周辺部相,広く分布し花崗閃緑岩とトーナル岩からなる主岩相,優白質な花崗閃緑岩とトロニエム岩を主体とする中心部相,斑れい岩類などから構成される.各岩相は,短期間のうちに岩体内側のものほど遅れて貫入したと考えられる.主岩相の岩石は,多くの元素について連続的な組成変化を示す.中心部相の岩石は,K_2O, Rb, Y, Zr,重希土類元素に乏しく,SiO2やNa2Oに富む.周辺部相の岩石の化学組成は全体として主岩相にほぼ連続する.周辺部相を含む花崗岩類は,コンドライト規格化図で軽希土類元素に富むパターンを示す.中心部相の岩石の主成分・微量成分組成は,始生代のAlに富むTTDあるいはTTGの平均的組成によく類似する.主岩相と周辺部相の親石元素存在度は,活動的大陸縁や島弧の火山岩と共通の特徴を示す.中心部相は,インコンパティブル元素について主岩相・周辺部相と類似した特徴を示す一方,重希土類元素やYの濃集度は低い.主岩相は,成因的に周辺部相と近く,沈み込みに関連して発生し浅所で分化したマグマから固結したと考えられる.一方中心部相は,主岩相とは別の酸性マグマから固結したと考えられ,その親マグマは,高圧で水に富む条件での苦鉄質岩の部分融解により生じた可能性がある.

著者関連情報
© 2008 地学団体研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top