理学療法学
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平成25年度研究助成報告書
栄養状態が虚弱高齢者の身体機能・認知機能・日常生活活動へ与える影響
─パス解析による検討─
加茂 智彦西田 裕介若林 秀隆石井 秀明髙山 慶太
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2016 年 43 巻 2 号 p. 152-153

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抄録

【目的】高齢者にみられる低栄養は生理的機能の低下とともに身体機能の低下を引き起こす。このようにリハビリと栄養は相互関係になっており,切っても切り離せない関係である。しかし,リハビリの視点から栄養を捉えた研究は少ないのが現状である。そこで本研究では栄養状態がADL に直接与える影響と身体機能や認知機能を介して,間接的に与える影響をパス解析を用いて検討していく。【方法】対象は地域在住虚弱高齢者178 名と施設入所高齢者184 名の計362 名とした。測定項目は,年齢,BI,MMSE,簡易栄養状態評価表(以下,MNA),SPPB(Short Physical Performance Battery),四肢骨格筋肉量(以下,AMM)とした。四肢骨格筋肉量は生体電気インピーダンス法,NIRS 法にて測定した。【結果】地域在住高齢者の年齢は84.7 ± 7.6 歳,身長は149.3 ± 7.7 cm,体重は46.9 ± 9.1 kg であった。MNA がBI に直接影響を与える指標である標準化直接効果は0.22 であった。また,MNA がSPPB を介し,BI に間接的に与える影響を示す指標である標準化間接効果は0.33 であった。MNA がBI に直接与える影響と,SPPB を介して影響を与える間接的影響を総合した標準化総合効果は0.55 であった。施設入所者の年齢は86.6 ± 7.6 歳,身長は151.1 ± 6.3 cm,体重は43.0 ± 7.8 kg であった。MNA のBI に対する標準化直接効果は0.23 であった。また,MNA のBI に対する標準化間接効果は0.42 であった。MNA のBI に対する標準化総合効果は0.66 であった。【考察】地域在住高齢者,施設入所高齢者ともに栄養状態がADL 能力に直接与える影響よりも,身体機能を介して間接的に与える影響の方が大きいことが明らかになった。今後は理学療法においても栄養状態を考慮していく必要があると考えられる。

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© 2016 公益社団法人 日本理学療法士協会
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