<Doctoral Thesis>
The mechanisms of adrenergic modulation of excitatory postsynaptic currents in pyramidal neurons of rat cerebral cortex

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Abstract アドレナリン受容体アゴニストは,受容体サブタイプ固有の働きを介して大脳皮質における興奮伝播に対して相反する作用を及ぼすことが,光学計測による研究から明らかとなっている(Kobayashi et al., 2000)。しかし,これらの作用がどのような神経基盤によって実現されているかは,不明な点が多い。そこで本研究では,脳スライス標本を用いた電気生理学的手法によって,このメカニズムの一端を明らかにする...ことを目的とした。はじめに,興奮性ニューロンである錐体ニューロンから細胞内記録を行い,電気刺激によって誘発される興奮性シナプス後電位(eEPSPs)に対するノルアドレナリンとα1 アドレナリン受容体アゴニストであるphenylephrine,β アドレナリン受容体アゴニストであるisoproterenol の効果を調べた。その結果,ノルアドレナリンは,記録ニューロンがⅡ/ⅢあるいはⅤ層のいずれにあっても,eEPSPs の振幅を減少させ,同様の効果が phenylephrine の灌流投与によって観察された。一方,isoproterenol は,Ⅴ層に存在する錐体ニューロンで観察されるeEPSPs の振幅を有意に増大させたが,Ⅱ/Ⅲ層の錐体ニューロンから記録されるeEPSPs の振幅には影響を与えなかった。次に,大脳皮質Ⅴ層に存在する錐体ニューロンを対象にホールセル・パッチクランプ記録を行い,グルタミン酸作動性シナプスを介した興奮伝達に対して,phenylephrine とisoproterenol がどのように作用し,その作用点がどこに存在するかを調べた。頻回刺激(33 Hz,10 連矩形波)によって誘発されるα-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole-propionic acid(AMPA)受容体を介した興奮性シナプス後電流(eEPSCs)に対して,phenylephrine はその振幅を抑制した。また,1 発目のeEPSCs における振幅の変動係数(coefficient of variation; 以下,CV)および1 発目の eEPSCs に対する2 発目のeEPSCs の振幅比(paired-pulse ratio; 以下,PPR)は,phenylephrineによって変化しなかった。一方,isoproterenol は,2 発目から10 発目のeEPSCs と比較して1 発目のeEPSCs の振幅を顕著に増大させ,その結果としてPPR を減少させた。また,isoproterenol は,1 発目のeEPSCs のCV を減少させた。以上の結果は,isoproterenol がシナプス前終末におけるglutamate の放出確率を上昇させる可能性が高いのに対して,phenylephrine はシナプス前終末に影響を及ぼす可能性が低いことを示唆するものである。その仮説を検証するために,微小興奮性シナプス後電流(miniature EPSCs; 以下,mEPSCs)に対するphenylephrine とisoproterenol の作用を調べた。Phenylephrine は,mEPSCs の頻度を変化させることなく振幅を抑制し,isoproterenol は,mEPSCs の振幅に影響を及ぼすことなくmEPSCs の頻度を増加させた。これらの結果は,phenylephrine がシナプス後膜のグルタミン酸受容体に作用してmEPSCs の振幅を減少させるのに対して,isoproterenol はシナプス前終末におけるglutamate の放出確率を上昇させる仮説を支持するものである。最後に,phenylephrine とisoproterenol のシナプス後膜に存在するグルタミン酸受容体に対する効果を調べた。その結果,isoproterenol の投与は,glutamate,AMPAおよびN-methyl-D-aspartate(NMDA)のパフ投与によって惹起される内向き電流を変化させないのに対して,phenylephrine は,これらいずれの内向き電流も抑制した。以上の結果は,phenylephrine がシナプス後膜上に存在するAMPA 受容体およびNMDA 受容体を介する興奮性シナプス伝達を減弱させるのに対して,isoproterenolはシナプス後膜上のグルタミン酸受容体には影響を及ぼさず,シナプス前終末からのglutamate 放出を促進することを示すものである。これら二つの異なった興奮性シナプス伝達の調節メカニズムは,大脳皮質のノルアドレナリンの要となる機能と考えられている信号―ノイズ(SN)比の向上に寄与している可能性がある。show more

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Created Date 2013.07.09
Modified Date 2023.11.21

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