日本皮膚科学会雑誌
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原著
苔癬型反応を主体とするparaneoplastic pemphigus
藤田 悦子小宮根 真弓湧川 基史朝比奈 昭彦川端 康浩相馬 良直佐藤 博之本倉 徹玉置 邦彦
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2001 年 111 巻 7 号 p. 1083-1090

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抄録

病理学的に著明な苔癬型反応が主体であったparaneoplastic pemphigus(PNP)の症例を報告した.62歳,女性.広範囲にわたる粘膜びらんと躯幹,四肢の角化性丘疹.組織学的に棘融解は認められず著明な苔癬型反応がみられた.蛍光抗体直接法では表皮細胞間,基底膜にIgG,C 3の沈着を認めた.正常ヒト皮膚を用いた間接法では細胞質に陽性,ラット膀胱上皮を用いた場合では上皮細胞間と基底膜部に陽性であった.患者血清からELISA法にて抗desmoglein 1および3抗体が,また免疫ブロット法にて250-,190-,130-kDの位置にバンドが検出された.B細胞性リンパ腫を合併.初診より1カ月半後,呼吸不全にて永眠した.蛍光抗体,免疫ブロットの所見に加え,本症例は棘融解が無いもののELISA法に抗desmoglein 1,3抗体が検出されたのでPNPと診断した.このようにPNPでは水疱より苔癬型反応が目立つことがある.そのため病態に液性免疫と細胞性免疫の双方が関与している可能性があると思われた.また本症の診断に際してはラット膀胱を用いた蛍光抗体間接法,免疫ブロット法,ELISA法による抗desmoglein 1,3抗体の検出など,多角的な検討が必要であると考えられた.

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© 2001 日本皮膚科学会
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