霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: B-18
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口頭発表
ニホンザルエクソーム解析~実験動物化にむけた遺伝的バックグラウンドの解明~
*郷 康広豊田 敦会津 智幸今井 啓雄藤山 秋佐夫平井 啓久
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抄録

 ヒトの病気や認知機能などの理解には、実験的な操作が可能なモデル動物の有用性は言を待たない。従来の医学、生理学で用いられてきたモデル動物であるマウスやラットなどのげっ歯類では、病気の発症メカニズムの違いや種々の生理条件の違いなどにより、ヒトを理解するためのモデルとしては不十分な面があることが指摘され始めている。それに対して、ヒトにより近縁なニホンザルは、その生理機能や高度な認知機能をそなえているため、医学研究や脳研究に多大な貢献が可能となる。本研究では、ヒトに最も近いモデル動物となり得るニホンザルに着目し、実験動物化へ向けた試みとしてエクソーム解析(網羅的エクソン領域配列解読)を行なった。ヒトのゲノム情報から作成されたエクソン領域配列解読用プローブを用いて、京都大学霊長類研究所で飼育されている個体群の2個体(高浜群、箕面群)を選抜しエクソーム解析を行なったところ、ターゲット領域(アカゲザルゲノムのエクソン領域、約50Mb)の76~91%の配列をカバーする解析結果が得られた。また、カバー率が20倍以上の領域も全エクソン領域の60%に達していた。この数字はヒトエクソーム解析の結果と遜色ない結果であり、ニホンザルエクソーム解析にもヒトエクソーム用キットが使用可能であることが分かった。加えて、それぞれの地域個体群で特異的に見られた遺伝子変異に関しても報告する予定である。

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© 2011 日本霊長類学会
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