理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 212
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神経系理学療法
尖足に対して整形外科的治療を受けた先天性筋強直性ジストロフィー症児の理学療法経過報告
*齋藤 大地小塚 直樹鳥井 智太郎井上 和広三島 令子内田 雅之菊池 真
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抄録

【はじめに】
 先天性筋強直性ジストロフィー症(congenital myotonic dystrophy;以下CDM)は常染色体優性遺伝疾患で、生下時のリスクと尖足もしばしば指摘される。しかし、新生児期を乗り越えた後は、緩やかに運動発達し歩行を獲得する症例が多い。そのため足部に対しての治療は重要となってくる。今回、足部変形が運動発達を阻害していた為、手術が施行されたCDM児2例の理学療法経過を報告する。
【症例1】
 39週5日3270gで出生、男児。母親は成人型筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy;以下DM)を発症。生下時より両側内反尖足を認めていたが、全身状態不良にて殆ど未治療。生後8ヶ月よりPT介入を開始、運動発達は進み掴まり立ちを意欲的に行うも、変形は進行し足関節背屈角度は右-30°左-60°、足背接地する様になる。2歳6ヶ月で、足関節周囲筋解離術を施行、術後療法の後3歳で独歩獲得。その後、足部背屈角度は、右30°左25°迄拡大しているが、外反扁平足を呈する。その後走行、ジャンプも可能となる。
【症例2】
 31週1866gで出生、男児。母親はDMを発症。呼吸窮迫症候群により74日間人工換気。生後8か月 PT介入を開始、足背屈角度は右15°左30°であった。4歳で独歩獲得するも、右足部は外反尖足に移行し、右足背屈角度は-30°で踵接地不能、膝反張して歩行。4才9ヶ月時に、右足関節周囲筋解離術を施行した。術後療法の後、右足背屈角度は5°、装具装着で歩容の改善を見る。
【考察】
CDM児の足部変形においては、早期の装具・徒手的アプローチは有効とされるが、生下時リスクにより介入が遅れた場合、変形は進行していく。今回一側足部と両足部の違いはあったが、機能的なアライメントの獲得に向けて最小限の筋解離術及び術後療法へと転換し、良好な経過が得られた。いかなる場合でも、介入開始からの可動域管理と体幹機能を含む粗大運動全般の発達支援の継続は必須である。
 2症例とも、発達指標の時期については類似が見られ、手術の時期に関わらず独歩を獲得した。しかし、手術時期が遅い例の方が、早い例に比べ、約1年の遅れが見られた。運動発達は独歩を目標として積極的に行い、足部の状態に応じて手術も選択肢に入れ適宜方向修正していくことが望ましい。
 CDMは、第19染色体長腕にある3塩基対反復配列数が増加しており、これに発症年齢・重症度は関連するとされている。親から子に伝わった場合のリピート数が増加する(anticipation効果)傾向にあり、本2症例も母親はDM患者である。母親の症状の程度によっては、養育環境での運動発達支援が非常に大変になる事があるので、家族状況を含めて、身体・精神面両方に考慮したアプローチが重要になると考える。

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© 2006 日本理学療法士協会
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