日本繁殖生物学会 講演要旨集
第101回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-85
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生殖工学
マウスES細胞からの生殖細胞分化誘導
*三原 敏敬小野寺 勇太寺村 岳士松本 和也佐伯 和弘細井 美彦
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抄録

胚性幹細胞(ES細胞)は体外で分化多能性、未分化性を維持したまま無限に増殖させる事の出来る細胞株である。特定の条件で多様な機能細胞に分化誘導できることから、近年、再生医療の材料として注目されている。 今回我々は、高度生殖医療における基礎研究を目的に、マウスES細胞を用いて生殖細胞の分化誘導を試みた。全ての動物実験は施設内動物実験委員会の承認を得て実施した。過剰排卵処理を施したC57BL/6Jマウスを同系マウスと交配し、胚盤胞期胚を得た。その後、免疫手術法にてES細胞を樹立した。樹立したES細胞はRT-PCR、免疫染色、Western blotによりNanog、Oct-4、SSEA-1といった未分化細胞特異因子の恒常的な発現を確認した。また、テラトーマ形成試験、in vitroでの分化誘導試験及びTetraploid complementation法により分化多能性を確認した。 生殖細胞の誘導にあたっては、同ES細胞にエピブラスト/生殖細胞特異的にGFPを発現するGOF18ΔPEベクター(Oct-4プロモーターΔPE-GFP)を導入し、レチノイン酸添加の有無、スキャホールドの有無など様々な条件で分化を進行させた。その後、それぞれの分化日数でフローサイトメトリーを用いてGFP+画分をソーティングし、Stella, Vasaなどの生殖細胞形成に関わる遺伝子の発現を観察した。その結果、分化の進行に伴いGFP+画分は著しい減少が認められた。しかし、GFP+陽性細胞においてはStellaVasa遺伝子の発現の上昇が観察された。RA添加区では非添加区に比べて早期にGFP+画分の減少が生じたが、両遺伝子を強く発現していた。本研究は胚様体を直接解析対象とするのではなくOct-4を発現する細胞のみを選択後に発現解析を行うため、より詳細に生殖細胞形成過程を観察することが出来ると考えられる。そのため、生殖細胞形成に関わる因子の探索に極めて有効な手法となる可能性がある。

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© 2008 日本繁殖生物学会
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