日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-26
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優秀研究発表 ポスター
胎児期のエタノール曝露は大脳皮質の形態異常に因る行動異常を誘発する
*駒田 致和河内 宏太井藤 早紀原 奈央河内 聡子池田 やよい長尾 哲二
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抄録

胎児期あるいは新生児期にアルコールに曝露すると、特徴的な頭部顔面の形成異常や、発達・学習障害、行動異常などを示す胎児アルコール症候群を発症することが知られている。アルコールは妊娠・授乳中にも摂取しやすく、また他の催奇形物質と異なり毒性の閾値が明確でないこと、個人差が大きいことなどから、その危険性や発症機序を明らかにすることは急務である。エタノールの胎児期曝露による頭部顔面の正中部の形成異常はアポトーシスに因ることが示されているが、発達・学習障害や行動異常の原因については不明な点が多い。そこで本研究課題では、高次脳機能の中枢である大脳皮質の形態異常に着目した解析を行った。エタノール曝露モデルマウスとして、妊娠6日から18日(12:00と18:00の2回投与、投与前2時間は絶食)まで25%(w/v)のエタノール0.5、1、2 g/kg体重をICRマウスに強制経口投与し、その胎児・新生児を用いて形態学・行動学的解析を行った。胎児期においては細胞増殖や神経新生に異常が見られた。これらの異常は新生児期に、神経細胞の分布や投射の異常、大脳皮質の層構造の形成異常に繋がっていることが示唆された。さらに、新生児期と成熟期の神経機能の異常を調べるために行動解析を行ったところ、新生児期の振戦が増加し、成熟期においても活動量の亢進が見られた。以上のことから、胎児期のエタノール曝露は大脳皮質の発生において神経新生や細胞増殖に異常を誘発し、組織構築や神経投射に影響を及ぼしていることが示された。また、これらの器質的異常は新生児、成熟個体に対して活動量の亢進といった行動異常の原因となることが明らかになった。しかし、本モデルマウスでは大脳皮質においてアポトーシスの亢進は認められなかったことから、別の発症機序によると考えられる。

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© 2015 日本毒性学会
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