微生物によるメタン酸化時の水素同位体分別係数は,Coleman et al. (1981)によって室内実験にて求められたが,天然環境下で検証した例は少ない.本研究は天然環境下のメタン酸化における水素同位体分別を定量化する事を目的とした.熱水は海水中に放出され,有意なメタンの濃度異常を示す熱水プルームとして検出される.鳩間海丘は南部沖縄トラフに位置する海底火山であり,熱水プルーム中では希釈を上回るスピードでメタンが酸化分解され,水素同位体分別を定量するには最適である.分析は連続フロー型質量分析計にて測定を行った.結果,水素同位体分別係数は1.100であり,Coleman et al.(1981)の結果である1.103とほぼ一致した.炭素同位体分別係数(1.009)と比較すると,水素同位体比の変化率が炭素同位体比と比べて約10 倍になり,これも室内実験の結果と良く一致した.