白金族元素は、マントルの化学進化を議論する上で有用な元素である。しかし、白金族元素のマントル中での地球化学的挙動には不明な点が多いため、白金族元素を用いたマントルの化学進化の議論には、常にあいまいさが伴ってきた。我々は、放射光を用いたマイクロXRF分析により、タヒチ島のレールゾライト捕獲岩から、ガラス包有物中に含まれるIr-Pt含有硫化鉱物を発見した。また、ガラス包有物のレーザーラマン分光分析では、ガラス部分からH2O・CO2は検出されなかった。これらの結果は、白金族元素が、硫黄を含むケイ酸塩メルトによって運ばれたことを示している。つまり、マントル中での白金族元素の挙動には、ケイ酸塩メルトが重要な役割を果たしている可能性がある。