本研究ではカオリン粘土中ダイオキシンの天然生成を検証するため、ダイオキシン濃度組成だけでなく、ダイオキシン炭素同位体組成を指標に用い、供給源推定及び生成メカニズムの解明を試みた。カオリン粘土から検出されたダイオキシンのもつ炭素同位体組成分布は、焼却ゴミや塩素系農薬等の人為起源ダイオキシンと優位な差を示し、双方ダイオキシンの炭素源は異なるものと考えられた。また、カオリン粘土のバルク炭素同位体組成とダイオキシン炭素同位体組成は優位な相関を示すことから、ボールクレー中から検出されるダイオキシンの炭素源は、ボールクレー自体に由来すると考えられる。つまり、これまでに発見された日米ボールクレー中の高濃度ダイオキシンは、焼却や農薬等の産業活動に伴う汚染の蓄積ではなく、カオリン粘土中で天然に生成した可能性が高い。本研究により各試料マトリックス間のダイオキシン炭素同位体組成分布が明らかになり、その組成分布はダイオキシン供給源識別するための非常に有効な指標であることが確認された。