古細菌由来のエーテル脂質を存在状態別に分析する手法を用いて、現世や地質時代の様々な試料について有機地球化学的研究を行った。1.暁新世/始新世の地球温暖化事変期(PETM)の堆積物中に含まれるテトラエーテル脂質を分析し、その濃度からTEX86を算出し、当時の海洋表層温度を推定した。その結果、PETM最初期に寒冷化を挟む2回の温暖化事変が起きたことが判明した。2.水曜海山の人口熱水孔から採取された沈殿物中のエーテル脂質を分析した結果、メタン菌に特徴的なエーテル脂質を検出した。他のバイオマーカー分析や鉱物分析などの結果も合わせて考察した結果、人工熱水孔内における微生物活動は多様性に富み、非常に活発であったことが判明した。