日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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海産紅藻スサビノリの異型世代交代における胞子体世代優占的な遺伝子転写制御機構の解析
*宇治 利樹嵯峨 直恆三上 浩司
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p. 0380

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抄録

植物の生活環は、胞子体(2n)世代と配偶体(n)世代から成る異型世代交代を基本とする。その制御機構の理解を長期的な目標として、胞子体と配偶体が独立して生育する海産紅藻スサビノリにおける世代特異的遺伝子の転写調節機構の解析を行った。まず、スサビノリが高等植物では見られないナトリウムポンプをコードする2つの遺伝子、PyATP1APyATP1B、を持ち、前者が胞子体で優占的に、後者が配偶体特異的に発現していることを明らかにした。そのため両遺伝子の発現制御機構の比較に興味が持たれたが、本研究では、PyATP1Aの胞子体世代優占的な遺伝子発現制御機構の解明に焦点を当て、PyATP1Aのプロモーター解析をパーティクルガン法による一過的遺伝子発現系を用いて行った。PyATP1Aのプロモーター領域をInverse PCR法により取得後、PyGUSレポーターを用いた5'欠失プロモーター解析を行った結果、配偶体世代特異的に機能するリプレッサー結合領域を特定することができた。そのため、この領域がPyATP1Aの配偶体での転写を抑制することで胞子体世代優占的な転写を可能としていると考えられた。現在、同定された制御領域における配偶体特異的な負のシス配列の同定を行っているが、今後はPyATP1Bの配偶体特異的発現の制御機構についても解析を進める予定である。

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© 2011 日本植物生理学会
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