日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リン欠乏条件下で形成されるクラスター根における酸性ホスファターゼの組織化学的局在性
*丸山 隼人和崎 淳小島 創一Kandeler Ellen伊藤 進信濃 卓郎大崎 満
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p. 0912

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抄録

植物は酸性ホスファターゼ(APase)や有機酸を分泌して土壌中の無機リン酸を可給化するなどの低リン耐性機構を備えている。ルーピンやハケアなど一部の植物はクラスター根とよばれる特殊な根を作り、これらの分泌物の放出能力を高めることが知られている。特にルーピンはリン欠乏条件下で発達したクラスター根においてAPaseを極めて多量に発現することが確認されている。しかしながら、組織レベルでのAPaseの局在性は明らかではない。そこで本研究では、根のAPaseの局在性を活性染色によって調査し、クラスター根とAPaseの低リン耐性機構における役割を理解することを目的とした。
+Pと-P条件で水耕栽培したルーピンの根をクラスター根とノーマル根に分けて採取し、切片を作成してELF97-phosphateを基質にAPase活性を染色したところ、-Pの根全体でAPase活性が確認され、特に表皮で活性が高く、クラスター根においては根端で極めて高い活性がみられた。また、土耕栽培した根でも同様のAPase活性の局在性が確認された。さらにハケアでもAPase活性の局在性を観察したところ、根端および表皮細胞で高い活性がみられた。このことから、クラスター根を発達させることがリン欠乏条件でAPaseを効率よく機能させるための一つの手段であり、低リン耐性機構において重要な役割を果たしていることが示唆された。

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© 2008 日本植物生理学会
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