日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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カラマツ木部柔細胞の深過冷却能に関与する可溶性蛋白質の検出
森本 和成*荒川 圭太藤川 清三
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p. 0874

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抄録

寒冷地に生育する樹木は、季節的な低温馴化によって凍結抵抗性が著しく向上し、冬季の厳しい氷点下温度でも生存可能となる。このような樹木の凍結挙動は組織によって異なり、師部や形成層の柔細胞は細胞外凍結で、木部の柔細胞は深過冷却によって氷点下温度に適応している。なかでも深過冷却機構に関する研究例は限られており、元来、木部組織における厚い細胞壁の構造特性が深過冷却機構の主要因と考えられてきた。そのため、細胞内成分の関与については糖類の蓄積以外はほとんど検証されていなかった。最近、当研究室では、深過冷却機構に関与する因子として、氷核形成阻害活性を有する二次代謝産物や過冷却能の増加に伴って誘導される遺伝子群を特定するに至った。そこで本研究では、主たる細胞成分の一つである可溶性蛋白質が木部柔細胞の深過冷却能に関与する可能性について検証するため、カラマツ(Larix kaempferi)の2ないし5年生の枝を用い、季節的な低温馴化による過冷却能の上昇ならびに人為的な脱馴化処理による過冷却能の減少の双方に対応して蓄積量が増減した可溶性蛋白質を二次元電気泳動法にて検出した。次に、これらの蛋白質の単離を試みた後、N末端アミノ酸配列が解析できた蛋白質について相同性検索を行った結果、Late embryogenesis abundant proteins を含む数種の蛋白質が同定できた。現在、引き続きこれらの蛋白質の同定を試みている。

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© 2008 日本植物生理学会
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