日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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越冬性植物の酸性凍結処理に対する応答
*稲田 秀俊荒川 圭太
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p. 359

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抄録

大気中の酸性物質を含む酸性雨が植物の生育や代謝に影響を与えることはすでによく知られている。しかし、酸性雪が積雪地域の越冬性植物に与える影響についてはほとんど調べられていない。そこで本研究では、酸性雪が越冬性植物の生存にどのような影響を及ぼすのかを簡易的に評価するために、組織切片を用いて酸性条件下での耐凍性試験を試みた。試料には低温馴化させた冬小麦(Triticum aestivum L. cv. Chihokukomugi)緑葉の切片を用い、硫酸でpHを調整した酸性溶液を添加し平衡凍結法による耐凍性試験を行った。凍結融解後の試料の生存率を測定すると、pH 4.0や3.0の酸性凍結処理は対照区の純水(pH 5.6)での凍結処理とほぼ同程度であった。一方、pH 2.0の凍結処理では対照区よりも生存率が著しく低下していた。この酸性凍結の場合、植氷した試料を直ちに4℃に移してゆっくり融解させても生存率はほとんど低下しなかった。同様の試料を緩速冷却によって平衡凍結すると、凍結処理温度の低下に伴って生存率が低下し純水凍結との差が徐々に大きくなった。-12℃での純水凍結処理の生存率は約40%であったのに対して酸性凍結処理では約10%であった。また、pH 2.0の酸性溶液を添加した試料を-12℃まで過冷却させると、生存率はとほんど低下せず約90%であった。これらの結果から、冬小麦の緑葉を硫酸共存下で凍結融解すると著しく凍結傷害を被ることが明らかになった。

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© 2004 日本植物生理学会
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