日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リン欠乏イネにリンを与えた時に起きる遺伝子発現変化のマイクロアレイ解析
*和崎 淳信濃 卓郎大西 一輝米谷 竜馬矢崎 潤史岸本 直己菊池 尚志大崎 満
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p. 002

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抄録

一般に土壌中のリン濃度は低濃度であることから、植物は低リン適応戦略を発達させている。その一方で、リン欠乏状態の植物にリンを施与した場合(以下、P再施与)に急速にリンを吸収することから、P再施与時のリンの吸収に注目した。そこで、リン欠乏イネを用いてP再施与に応答して起きる遺伝子発現の変化をcDNAマイクロアレイによって網羅的に調査することを目的として実験を行った。水耕栽培によってリン処理(+P, -P, P再施与)を施したイネの根部または地上部から単離した全RNAを試料としてcDNAマイクロアレイによる遺伝子発現の解析を実施した。P再施与によって発現が有意に増減した遺伝子数は-P処理によって発現が有意に増減した遺伝子数の数倍であった。P再施与で最も発現が抑制された遺伝子は、-Pで最も発現が増加した新規遺伝子OsPI1であった。このようにP再施与で発現が減少した遺伝子の多くは-Pで増加した遺伝子であり、リンを十分に与えて栽培した+PとP再施与の間では差がなかったことから、-P条件に特異的に反応していることが明らかとなった。一方、P再施与で発現が増加した遺伝子の多くは、+PとP再施与を比べてもP再施与で発現量が多いことから、Pが欠乏している植物が、Pを再施与された際にPを獲得する場面において重要な役割を担う可能性が推察された。

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© 2004 日本植物生理学会
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