抄録
Water-water cycle (WWC)は光合成の光誘導過程でのスターターとして機能している(1)。WWCは光照射直後の迅速なNPQ形成に関与し、突然の光照射からのPS IIの保護のみならずチラコイド膜におけるデルタpH形成を経て、Rubisco activaseを含む炭酸固定系の活性化に必須なATP供給をするものと思われる。炭酸固定能力のみが特異的に低下しているrbcSアンチセンスイネでは、高いWWC電子伝達活性は認められない(1)。にもかかわらず、このイネは高いNPQ形成能力を持ち、強光下でも健全に成育することができる。NPQ形成はアンチセンスイネにおいてもおもにWWCによるが、高いNPQはPS-I cyclic電子伝達による大きなデルタpH維持によるキサントフィルサイクル色素のデエポキシ化によって行われている(1, 2)。このように、PS-I cyclicはlong-termなPSIIの制御とNPQ維持に機能すると思われる。
(1) Makino et al. (2002) Plant Cell Physiol 43, 1017-1026
(2) Ushio et al. (2003) Soil Sci Plant Nutr 49, in press