日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シラカンバ木部組織における冬季誘導性の細胞外蛋白質の解析
*荒川 圭太春日 純藤川 清三
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p. 307

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抄録

 寒冷地域に分布する落葉広葉樹のシラカンバ(Betula platyphylla L.)は、秋から冬にかけて季節的な低温馴化過程を経て耐寒性が著しく上昇する。シラカンバの木部放射柔細胞は深過冷却によって凍結抵抗性を高めるが、この抵抗性の誘導には細胞内部だけでなく細胞外部の要因も関連する可能性が考えられる。そこで本研究では、木部組織の凍結抵抗性と関連性のある細胞外因子を見い出すため、低温馴化過程で生じる木部組織での細胞外蛋白質の組成変化を調べ、冬季誘導性蛋白質の同定を試みた。
 野外で採集したシラカンバの枝から皮相組織を取り除いて得られた木部組織を材料に用い、短時間の酸性溶液処理により細胞外蛋白質を抽出した。夏と冬に採集した組織からそれぞれ調製した細胞外蛋白質画分の組成をSDS-PAGEにより比較したところ、季節的な低温馴化によって30 kDa付近の複数の蛋白質バンドが顕著に増加していることが明らかになった。これらの冬季誘導性の細胞外蛋白質(WCWPs)を単離して、N末端アミノ酸配列の分析をおこなったところ、互いにアミノ酸配列が類似しており、生体防御に関連するPR蛋白質と相同性を示すことが判明した。また、WCWPsに対する抗体を用いてイムノブロット解析をおこなった結果、これらは互いに冬季誘導性のアイソフォーム蛋白質であることが示唆された。

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© 2003 日本植物生理学会
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