日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2005年 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G4-22
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G4:深成岩及び変成岩
東南極リュツォ・ホルム岩体、日の出岬変成岩類の帰属について
*本吉 洋一廣井 美邦外田 智千白石 和行
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抄録

 東南極リュツォ・ホルム岩体は(1)角閃岩相からグラニュライト相への累進的な変成度の上昇、(2)珪線石を含む岩石中の残晶状藍晶石の出現、(3)550-520 MaのジルコンのSHRIMP U-Pb年代(Pan African変動の重複年代)で特徴づけられてきた(Hiroi et al., 1991; Shiraishi et al., 1994, 1997)。しかし、同岩体の日の出岬からは、SHRIMPによって1017 Maの年代が得られているが、他の地域に見られる500 Ma 前後の年代は報告されていない。本報告では、電子線マイクロプローブ(EMP)を用いたモナザイトの年代測定結果を報告するとともに、2004年12月に行った現地調査の結果も合せて、日の出岬変成岩類の帰属について議論する。    SHRIMPによって報告されたジルコン年代は、火成岩起源の変トロニエム岩からのものであったので、同地域の変泥質岩4点について新たにEMP年代測定を行った。その結果、935-1007 Maのアイソクロン年代が得られ、SHRIMPによる結果より若干若いものの概ね調和的であった。また、500 Ma前後の年代は、どのモナザイトからも検出されなかった。さらに現地調査の結果、塩基性片麻岩の一部から斜方輝石+単斜輝石の共生が確認され、変成度がグラニュライト相条件に達していたことも明らかになった。    以上の年代学的、記載岩石学的事実から、(1)日の出岬の岩石の変成年代は約10億年前であり、またPan African変動の重複を受けていないこと、(2)変成条件はグラニュライト相に達しており、リュツォ・ホルム岩体の変成地温勾配とは調和的ではないこと、(3)Hiroi et al. (1983)によって報告されている藍晶石の産状からも、リュツォ・ホルム岩体のP-T経路とは異なる変成履歴を有している可能性があること、が明らかになった。つまり、日の出岬はリュツォ・ホルム岩体の中では異質なブロックであり、その帰属については再検討する必要がある。東南極大陸において、1000 Ma前後の変成年代が得られている地域はリュツォ・ホルム岩体に隣接するレイナー岩体内陸部であるが、今後記載岩石学的データも含めて詳細に検討したい。 【文 献】 Hiroi et al., 1983, Mem. Natl. Inst. Polar Res., Spec. Issue, 28, 115-131. Hiroi et al., 1991, in Geological Evolution of Antarctica, 83-87. Shiraishi et al., 1994, Geology, 102, 47-65. Shiraishi et al., 1997, in Antarctic Region, 79-88.

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© 2005 日本鉱物科学会
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