新第三紀中新世徳和花崗岩体は砂質岩・泥質岩を主体とする小仏層群に貫入し,周囲に接触変成帯を発達させている.徳和岩体の接触境界の一部ではミグマタイトが観察され,メタテキサイト・ダイアテキサイト・キンセイ石を含むパーアルミナス花崗岩とが連続的に露出している.メタテキサイトからダイアテキサイトに漸移する狭い範囲にみられる砂質な岩相には,ふるい状組織を呈しカルシウムに富む斜長石がみられる.これらは石英・黒雲母を包有し,包有物の多いグレインほどカルシウムに富む傾向がある.これらの斜長石は組織と組成から部分融解作用の溶け残り鉱物と考えられる.一方,ダイアテキサイトおよびパーアルミナス花崗岩に含まれる斜長石は顕著な組成累帯構造を呈し,カルシウムに富むコアを持つ.このような特徴的な組成累帯構造を呈する斜長石は,温度降下時に部分融解作用の溶け残り斜長石をコアとしてメルト中で成長したものと考えられる.